あしたになれば
邦裕は苦笑して、無言で近くに座る。

奈央はうつむいたまま

「ありがとう」

そのまま、無言で時間が過ぎると、また廊下から、走り音が聞こえてきた。

奈央を机に隠れさせ、廊下の方を見る。

走り音は事務室の前で止まった。

何かの時のために、邦裕はバールを握りしめる。

事務室の前で止まった人影は、中を伺い喋り声が聞こえてきた。

二人は顔を合わせ

「普通の人?」


机の下に丸まり隠れていた奈央が、静かに机からでてきて、細目にして、真剣に見る。

「あれ?慎太郎?」

邦裕は驚いた顔で

「知り合い?」


「うん、同級生!」

それと同時に、廊下の人影は事務室の前を走り去ろうとした。

急いで奈央の手を引っ張りあげ、廊下に向かおうとするが、まだ奈央は歩く事ができなかった。

邦裕は苦笑して

「また、おんぶだね」

顔を伏せて

「ごめんね」
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