JUICY KISS ~あなたの唇独り占め~【番外編追加】
「噂のことも知ってるんだ」
私はあの悪夢のような出来事を思い出して、目を閉じた。
ゆめちゃんにはめられたと思ったけど、ゆめちゃんは自分自身を見失っていただけ。
好きで好きで好きで、おかしくなったんだ。
目を開けると、キラキラした水面に綺麗な裕美子のターコイズブルーの足の爪が浮いては沈み、また浮いて。
「あの噂は信じてません。倉坂さんってそんな人じゃないと思います。それに、あの派遣の人、相当性格悪いってみんな言ってますよ。だから、相沢先輩の名前勝手に出したりして、ひどいです」
その通りだって思うけど、ゆめちゃんのことも悪く思えない私がいる。
「そうなんだけどさ」
歯切れの悪い私を見て、裕美子が首をかしげる。
「まさか、本当じゃないですよね?やり逃げされたなんて嘘ですよね?」
「うん。もちろんそれは嘘だよ。でも、ゆめちゃんも悪い子じゃないと思うんだよね」
「ライバルのこと、そんな風に思っちゃ、負けちゃいますよ!!」
と私の濡れた背中をベシっと叩いた。
「しっかりしてください!絶対に、負けないでくださいよ」
私は、苦笑いをしつつ、裕美子のおっぱいを指でツンツンしてみた。
「キャァ~!!」
と逃げる裕美子がおもしろくて、またツンツン。
女子高生のようなこの空気が楽しくて、しばらくそんなことをして、現実から逃げていた。