JUICY KISS ~あなたの唇独り占め~【番外編追加】
夜風は心地良い。
でも、まだ指先が震えていて、自分の手を自分で握り、その震えを止めようとしていた。
もう、若くもないし、いろんな経験はしてきた。
この歳で、“初めて”っていう出来事ってあまりない。
さすがに、これは初めてだった。
裕美子との後半の話は、完全にめちゃくちゃで、私は半分雲の上にいるような現実感のない時間だった。
好きだよ、壮志さん。
本当にたくさんの人にモテちゃう人だけど、その誰よりも壮志さんのことを愛したい。
誰にも負けなくない。
今でも大好きだけど、もっともっともっと好きになりたい。
守りたいって思ったんだよね。
守って欲しいっていうよりも、守りたいって。
こんな風な愛は、初めてだなって感じてる。
目を閉じて、大きく息を吸い込む。
ガーリックのような匂いが体の中に入ってくると同時に、よく真佐と行くバーで食べるガーリックトーストを思い出す。
真佐に伝えるべきか、黙っているべきか。
そんなことを考えながら、目を開けると、駆け足で近付いてくる壮志さんが目に入る。
この瞬間が好き。
好きな人が自分に向かってくる姿。