JUICY KISS ~あなたの唇独り占め~【番外編追加】
「と、ここまでは表の俺。裏の俺はな」
壮志さんは真面目な顔をして、私を見つめた後に、私に右手を差し出した。
「これ、見て」
壮志さんの右手のこぶしには、血がにじんでいたんだ。
「どうしたの、これ」
「ん。俺もまだまだ人間できてないからさ。城ノ上さんを殴りたいって思った。でも、社会人としてその勇気がなかったから、壁を殴った。へへ」
冷静を保とうと頑張っていたんだなって思うと、本当に愛しくて抱きしめたくなっちゃう。
「殴ってから、痛くて後悔したよ」
と目を細めた壮志さん。
私はその血のにじんだ右手を、ぎゅっと握った。
「かわいそうに。痛かったね」
涙が出そうになるよ、壮志さん。
我慢して偉かったね。
「そんなにやさしいこと言うと、襲っちゃうぞぉ?」
照れ隠しのようにそう笑った壮志さんは、私の手の上に左手を重ねた。
熱い目をしていた。
わかる。
いつもと違う目ってこと。
「菜々子、俺から離れないで。絶対帰さない」
指を絡めただけで、体が熱くなるのを感じた。
指先を絡め、熱い目で見つめられるだけで、感じている私。
壮志さんとひとつになりたい。
壮志さんの傷を少しでも私が消せるなら、ずっとずっと一緒にいる。
帰りたくない。