ブナイレンアイ
「………ハル…?」
向かいから歩いて来た女の人が発した先輩の名。
嫌な予感がして、私は先輩の腕にしがみついた。
先輩のことをハルと呼んだその人は、とてもキレイな人だった。
「何のようだよ」
対するハルキは怖い顔に硬い声。
握った手が微かに震えている。
「やっぱり、怒ってるよね?ごめんなさい。ずっと謝りたかったの…」
女の人はその場で頭を下げた。
そしてうるうるした瞳でハルキのことを見上げる。
やめて。先輩をそんな目で見ないで。
私の中に見にくい感情が芽生え始めた時、ハルキが口を開いた。
「やめろよ、別に謝って欲しいわけじゃない」
その声は低く、苦しげだった。
「もう、俺の前に現れるな」
見たことのない先輩だった。