きっともう大丈夫
沙希さんが病院に行って1時間が経過したころだった。
裏口から誰かが入って来た様子にビクッとした。
恐る恐る裏口の方をみるとそこには明良さんがいた。
「お前何してんだ?」
いつもと変わらないそっけない言い方。
でもそれも慣れた。
「ブートニアを作っているんです」
明良さんは店をキョロキョロと見渡す。
「沙希は?」
ほらね、また沙希は?だよ。
沙希さん沙希さん沙希さんばっかり
私だってここの店頑張ってるのに・・・むかつく
「詩織さんの赤ちゃんがもうすぐ生まれそうなんで病院に行きました」
すると明良の顔がぱっと明るくなった
「詩織・・うまれるの」
初めて見る笑顔だった。
この人こんな顔もできるんだ。
私の前では決して見せることのない笑顔
これはきっと沙希さんのものなんだ。
そう思った時だった何かがぷつっと切れたそんな感じだった。
私はいきなり明良さんに抱きついた。
明良さんは私の行動に驚き
「お・・おい…どうしたんだ?は・・離れてくれ」
私はさっきよりももっと強く抱きついた。
「好きなんです・・・初めて会ったときから」
「俺には沙希だけだから気持ちには答えられない」
明良さんが私を抱きしめることはなかった。
私は顔だけ上げ明良さんを見上げた
だが明良さんの顔は無表情のままだった。というよりも冷やかだった。
「こんな冗談はやめてくれ。俺は詩織の病院に行く・・・戸締り頼む」
そういって抱きしめる手をほどこうとした。
こんなチャンスもう二度とない
私の中である決意をした。
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