きっともう大丈夫
私はお金を払うため慌ててバッグから財布と取りだしたが
鈴木君の姿はもうなく・・・私は小さく舌打ちをして店を出ようとした。
するとお店の大将が
「お姉ちゃん、明良・・・あいつ不器用な奴だけどいいやつだから頼むな」
とりあえず頷いておこうと思い「はい」といって店を出た

店を出ると鈴木君が空を見上げていた。
「鈴木君さっきの代金だけど・・・」
「いいよ。俺が誘ったんだから」
「でも・・・」
そう言う訳にはいかないと思ったがまた何か言われそうだから
今度機会があったらお返しよう。
そう言えば鈴木君車置いていくっていってたな・・・お酒飲んだし・・
タクシー捕まえて帰った方がいいのかな・・・
時間はもう日付が変わっていた。
「鈴木君、私タクシー拾って帰りますね。今日はご馳走様でした」
回れ右してきた道を戻ろうとした。
すると私の手首を鈴木君が掴んでいた。
「鈴木君?」
彼は私の手を掴むと逆方向に向かって歩き出した。
私はそれに引っ張られるようについていく
「ね!ねーどこ・・いくの?私帰るんだけど」
彼は黙って歩いてく。
何度も振り払うけれどしっかり掴まれていてはなれない。
私は口を尖らせたままついて行くしかなかった。
しばらく歩いてると急に鈴木君が立ち止った
文句の一つも言わなきゃすまない!私は文句を言おうと顔を上げその言葉をそのまま飲み込んだ
「・・・・きれい・・・」
そこは高台にある公園で、町が一望できた。もちろん私たちの店も見えた。
「鈴木君!あれ!あれうちの店だよね。」
「・・・俺がまだ花の配達しかさせてもらえなかった頃、ここを見つけてよくさぼってた場所なんだ。嫌な事があった時もよく一人でここの夜景と夜空に救われてたんだ」
「え?」
とても懐かしげに星を見てる鈴木君にドキッとしてしまった。
「・・・なんで・・私を連れてきてくれたの?」
鈴木君は顔を私に向け、同じようにほほ笑んだ。
私はそんな彼のほほ笑みになぜか体が甘く痺れるような感じがして驚いた。
ちょっと今のは反則よ・・・
「ここは俺のお気に入りの場所なんだ。・・・・今日はお前に見せたくて連れてきた」
お前に見せたくて?だってここは・・鈴木君にとって大切な場所じゃ・・・
「鈴木君?」
隣にいたはずの鈴木君がいなくなってる。あれ?そう思った時だった
私を後ろから抱き締め私の肩に顔をうずめる・・・・
何がどうなっているのかわけわかんなくってパニック寸前。
「ちょ・・・ちょっと鈴木君?どうしたの?具合でも悪いの?」
「お前に見せたかったんだ・・お前だけに・・・」
それは今まで聞いたことのない甘い声だった。
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