きっともう大丈夫
「本当にお世話になりました。明良、沙希本当にありがとう。」
もうすぐ出産を迎える詩織が夫である一海さんと
最後の挨拶のため店に来た。
「私たちこそ詩織がいたからこの店をやってくことができたんだよ。
お礼を言うのは私たちの方だよ」
「さーきー」
詩織に泣きながら抱きつかれる
「おいおい、そんなに抱きつくと子どもが潰れちまうぞ。それと
忙しくって俺でさえも沙希といちゃいちゃ出来ねーんだから
俺の前で沙希と抱き合うなよな」
どさくさまぎれに恥ずかしい事を言われ、顔が赤くなる。
「べーだ。こんなことしたくらいで子どもは潰れないしー。あっ!そうだ」
詩織は私を抱きしめたまま明良を睨みつけた。
「明良・・・あんた、沙希を泣かすようなことしたら許さないからね。」
「わかってるよ。言われなくたって俺には沙希しかいないから
余計な心配すんな。それより自分の心配しろ」
「自分の心配?」
「お前俺に似て口が悪いし、かなりの男前だから・・・
一海さんに愛想尽かされないようにしろよ」
そんな私たちをなぜか冷やかな顔で菜々美が見ていたとはだれも知らなかった。
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