きっともう大丈夫
「ハル・・・ここって・・・」
「そう!俺たちが初めてデートした場所」
そこは私たちが9年前に初めてデートをした動物園。
でも時間は夕方4時を過ぎていた。
普通ならもう閉園時間だ。
だけどハルは入場券売り場に向かって歩き出した。
「ハル?」
「今日はね、ナイトズーっていって夜の8時半までやってるんだ」

初めての夜の動物園にワクワクしながら私たちは入場した。
土曜日という事もあり家族づれやカップルでにぎわっていた。
普段は眠っている夜行性の動物たちが動いていることに
感動したり、普段動いている動物が夜になると動かなかったり
ふしぎな感じだった。
ふと思った。
ハルはあのデート以降、好きな人とこうやってここに来て
こうやって手を繋いで動物園を楽しんだのだろうか・・・・
私は・・・9年ぶりだった。
明良とは動物園というより植物園の方が多かったしね。
「どうかした?さっきから黙ってるけど」
「うん・・・」
つい、歯切れの悪い返事をしてしまった。
「思った事はいってほしいな・・・」
私は少しの沈黙の後、口を開いた。
「ハルって・・・私以外の人とここでデートとかしたのかな?って思って」
私の言った事が意外だったようでハルは少し驚いてた。
「だって、ハルかっこいいし、モテるからきっとたくさんきて・・・・」
「沙希以外は誰とも来てないよ。」
「うそ・・・・」
「何でそんな事で嘘言わなきゃいけないんだ?
ここは俺にとっても大事な思い出の場所だから・・・・」
私は何だか恥ずかしくなった。

「何で、そうやってかっこいいことしれっと言っちゃうのかな~」
私は赤くなった頬を手で扇いだ。
「沙希にだけだし~」
そう言いながら私の前を歩くハルを私は愛おしく思えた
それから私たちは夜の動物園を手を繋ぎながら楽しんだ。

だがそんな幸せな時間の裏でとんでもない事が怒っていたことなど
この時私もハルも知る由もなかった。

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