不意打ち男子のずるいとこ





「ほら!

これで涙ふきなさい!!」



目の前にせまってくるものに、ぎゅっと目を瞑るとまぶたに柔らかい感覚がした。


それが莉莎子のハンカチだって気づいて、じんわりと心があたたかくなってくる。




「うん...


うん...っ、ありがとっ、りさ、こぉ」



「はいはい」



最初はビックリしてた莉莎子だけどきっと何かを察してくれたんだと思う。





ハンカチでまぶたを抑えてると、少しだけ莉莎子の匂いがする。

私をいい匂いがするって言ってたけど、

莉莎子もすごくいい匂いだよ。




ってちょっと変態発言かな。



でもありがとう、莉莎子。




ーー...


だいぶ落ち着いて、まぶたからハンカチを取ると涙のせいかキラキラと世界が光ってるみたい。




さすがに道端で泣くのは気が引けるって莉莎子が、近くのファーストフード店に場所を移動してくれた。


まぶたをハンカチで抑えた人を案内するってちょっと恥ずかしいよね。




「ありがとう...莉莎子」



今日何回目になるんだろ、莉莎子へのお礼。




「ほんとビックリしたんだから・・・

でも急にどうしたの?


寧位が泣くなんてよっぽどのことなのね」




オレンジジュースをストローで飲みながら私を見つめる莉莎子。



守谷と女の人のことがまた頭に浮かんできて、



チクチク胸が痛いけど、


もう大丈夫。



泣かないもん。









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