不意打ち男子のずるいとこ
「おいっ!」
そんな焦った声が聞こえてハッとすると、
トンッと肩に何かが当たる感覚がした。
あ、れ.....?
床に転ぶはずだったのに、いつの間にか大勢も戻っていて。
痛みすら感じない。
感じるのは.....ほんのり香る爽やかな香り。
いつか匂ったことのある、好きな香り。
「ナンパ目的なら帰っていただけますか」
そんな低い声が頭上から聞こえて、
見上げると、ヤンキーを睨む背の高い男の子がいた。
黒髪で、黒縁メガネーー...
「も、りや?」
思わず出てきた言葉に自分でもびっくりした。
でもーー...
私の声が聞こえたのか、ヤンキーから視線を私に向けた男の子はホッとした顔をした。
「寧位先輩?!」
教室の入り口でそんな声が聞こえてきて、こっちに走ってくる足音がする。
その瞬間、肩にあった手のぬくもりがスッとなくなる感じがした。
「おい、
100円受けとったら帰れ」
守谷はそういうとまたヤンキーを睨んだ。
ヤンキーはチッと舌打ちをすると床に落ちた100円を拾うと背を向けて教室を出て行った。
その場に残ったのは、守谷と金田くんと私の3人。
なぜか沈黙で気まずい空気が漂う。