不意打ち男子のずるいとこ
いつだっけ?
守谷を目で追い出したのは。
好きだって自覚したのは。
あの時、どのくらい守谷のことが好きだったんだろう。
あの時を思い出せないくらい、今の気持ちはすっごく大きくて。
あの時なんて、小さくて、もう諦めようなんて思って、儚くて。
そんなの思い出せないよ。
そのくらい、好きって気持ちが大きくなってるんだ。
「バーカ」
バカはどっちだバカ野郎。
そんな気持ちを込めて守谷を見つめたまま、誰にも聞こえない声でつぶやいた。
「先輩.....着替えて」
隣からそんな声が聞こえてハッとする。
それは少し怒りを含んでいるのか、いつもより低く感じる金田くんの声。
「早く」
急かすような口調にびっくりする。
いつもの金田くんじゃないみたいだから。
「う、うん...着替えてくるね」
金田くんのどこか余裕のない表情を見た気がする。
初めて見た金田くんの顔だった。
もしかして、
こんな似合わない格好でいる私と一緒にいるのを、誰かに見られるのが嫌だったのかな?
ご、ごめんなさい。
金田くん。
すぐに着替えて来るからね.....!