不意打ち男子のずるいとこ
そんな金田くんの横顔をじっと見る。
いつ見てもキレイだなって思う。
「あーあ...このまま」
女装コンテストを眺めたまま、金田くんが言う。
健康的なピンク色の唇がしなやかに動く。
「寧位先輩を奪えたらなー」
瞬間、いたずらっ子みたいな笑顔の金田くんがこちらを見た。
背景では大きな歓声が体育館内に響く中、
私と金田くんだけ、なんだか空気が違うみたい。
驚きで、声が出せないよ。
奪えたらなー
金田くんの言葉が何度も頭の中でぐるぐる回る。
「それ、って...」
なんとか声を出したけど、声が震える。
よく鈍感だと言われる私にでも、分かっちゃったかもしれないよ?
それとも私の自意識過剰で、今私が考えてることとは違う?
そんな考えで頭の中がいっぱいだ。
「続きは...明日4時、またここで」
そんな中途半端な答えを残して、金田くんは体育館から出て行った。
金田くんの笑顔が、いつまでも心に残った。