不意打ち男子のずるいとこ





ドクンと胸が揺れる。



「寧位先輩、昨日はありがとうございました。

楽しかったです」




笑顔を向けられて、少し戸惑う。


てっきり、もう言われちゃうのかと。


一度暴れた心臓を落ち着かせて、私もマイクに力をこめた。





「ううん...

私も、昨日は楽しかったです」



フワリと笑うと、会場がざわついた気がする。



「昨日、2人が文化祭まわってるの私見たよ」

「皆の金田くんが〜」

「昨日って何?!」



そんな声が聞こえてきた。




そっか。

そうだよね。



金田くんって私からしたら仲のいい後輩になるのかもしれないけど、他の人からみたら金田くんはこの学校の有名人だもんね。



背はあまり高くないけど、サッカー部で、1年生でレギュラーで。


日に焼けた肌が彼のあどけない笑顔を引き立たせてて。





この学校の王子様だよね。


女子が放っておく理由がない。




目の前にいるのは、そんな人。


そんな男の子。





そう考えたら、金田くんが急に一人の男の子に見えて。


何で今まで意識しなかったのかな。



そんな疑問が胸の中を渦まく。










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