不意打ち男子のずるいとこ
ありがとう、なんて素直に言えない。
けれど
ごめん、そんな言葉も金田くんの気持ちには当てはまらない気がする。
どう答えればいいのか、迷う。
一度勢いよく上げた顔は金田くんの目線と交わっていて。
逸らすことができずにいる。
どうしよう。
そんな思考が頭の中をぐるぐるまわる。
「けどね、先輩。
俺分かったんだ昨日。」
黙ったままの私にしびれを切らしたのか分からないけれど、まっすぐな瞳を私に向けたまま金田くんは続けた。
うっすら口もとに笑みを浮かべながら。
でも、どこか寂しそうな金田くんの表情。
なんとも言えない自分に悔しさが募る。
「俺...あんな表情の寧位先輩見たの初めてだった」
き、のう・・・?
思いがけない金田くんのひとことに首を傾げる。
「この数ヶ月ずっと一緒にいたのに、一度も見たことなかった表情を、
あの人には見せてた」
あの人。
そんなフレーズに胸がトクンと鳴る。
あの人ってーー...
「寧位先輩をあんな顔にできるなんて悔しかった...自分に腹がたった...。
この数ヶ月、自分なりに頑張ってきたはずなのに何で?って。
でも、それで気づいたんです」
まだまっすぐな視線の金田くんは本当に悲しそうな顔を見せた。
金田くんの、はじめて見る顔だった。