不意打ち男子のずるいとこ
「寧位先輩。
...俺をフってください」
すると金田くんは私に頭を下げた。
ーーーえ?
会場もさっきよりザワザワと落ち着かない。
「聞いてください。
俺からのお願いなんです。
フって.....ください、ね...いせんぱ...ぃ」
マイクを通さずにそう言った金田くんの声がステージだけに響いた。
私の耳にも、しっかり、聞こえた。
途切れ途切れのその声はどこか震えていて。
頭を下げているから、金田くんがどんな顔をしてるのか分からないけれど。
しなくちゃ、いけないって。
金田くんのお願い聞いてあげなくちゃ、って。
思った。
私も覚悟を決めた。
マイクの電源をオフにして、声を出す。
ごめんね、金田くん。
でも、ありがとう。
伝われ、伝われって願いながら言葉を並べた。