不意打ち男子のずるいとこ
「新沢」
頭上で聞こえた、ずっと聞きたかった声。
大好きな声。
反射的にその人の方を振り向く。
そこには黒髪で、身長が高くて、メガネをかけた男の子。
ずっと探してた人が、気持ちを伝えたい人が、目の前にいる。
「守谷...!」
守谷だと確信すると、どんどん視界が歪んでくる。
ここで泣いちゃいけないって分かってるけど、何でだろう。
守谷が目の前にいることが嬉しいのかな。
涙が今にも溢れ出しそうだよ。
「何で泣きそーなんだよ」
少しおかしそうに笑う守谷にキュッと胸が掴まれる感覚。
こんな場面でも、
ああ、私って守谷のこと好きなんだなあって思うんだよ。
思っちゃうんだよ。
こんなの、好きにならない方がおかしいよ。
この気持ちをはやく伝えたい。
私も覚悟、決めなきゃ。
泣きそうだった顔を引き締める。
そんな私に気づいた守谷が不思議そうな顔をする。
どうした?
そんなことを言ってみるみたいで。
スッと軽く息を吸った。
「...守谷。
私の気持ち、聞いてくれる?」
まっすぐ守谷の目を見て言った。
ドキドキと鳴る胸が、今にも守谷に聞こえちゃうんじゃないかって心配になる。