先生、甘い診察してください
甘恋01
始まりは突然
始まりはいつだって突然。恋愛は、気まぐれに訪れる物。
だけど私は愛だの恋だの言ってる場合じゃない……。
「あや!ご飯できたよ。おいで」
「あ……うん」
もう夕飯の時間みたいで、お兄ちゃんが呼びに来た。
うちは両親が共働き。基本的に家の事はお兄ちゃんがしてる。
私、瀬川あや。現在高校1年生。
青春真っ盛りの普通の女子高生。
“ある一点”を覗けばね…?
「どうした?今日もあんまり箸が進んでないね。具合悪い?」
「ううん。そんな事ないよ!」
今日の夕飯のおかずはとんかつ。だけど箸が進まない。
不味いからって訳じゃないよ?
(……ダメだ)
小さくため息をついて、箸を置いた。
「もういいの……?」
「うん……食欲湧かなくて…」
見る見るうちに、不安そうな表情になっていくお兄ちゃん。
「あや!悩みがあるなら兄ちゃんに相談をっ……」
勢いよく椅子から立ち上がったお兄ちゃんは身を乗り出して、私の両肩を掴んだ。
「悩みがあるわけじゃないから…。じゃあ、宿題するから部屋に戻るね」
「あっ、あや……!」
椅子から立って、逃げるように自分の部屋に戻った。