先生、甘い診察してください
「夏と言ったら、やっぱこれだな」
今日の夕飯は、お兄ちゃん特製の冷やし中華。
「これ食べると、さっぱりするね」
「なーんか、これを食べると、夏って実感するよ。うんうん」
夏を噛み締めながら、面をすするお兄ちゃん。
一方の私は、
(ご褒美、どうしよう)
頭の中は、これでいっぱい。
ずーっと、この事を考えてる。
「あや、最近なんか悩んでる?」
「そんな事ないよ?」
もちろん、ご褒美の事は、内緒。バレたら、ね?
いろんな意味で厄介な事になりそうだから。
「てゆーかさ、あや、本当に智也に何もされなかったわけ?」
「うん、されてないよー。いきなりどうしたの?」
まだ心配してたんだ……。
「男ってのは、みんな狼だから、心配なんだよ」
「大丈夫だよ。そんな心配は無用」
「大丈夫じゃないの!」
少し強めの口調に、ビクッとして、手から箸が落ちた。
「あやは可愛くて、汚れない純粋な子だからさ。狼どもに狙われてるんじゃないかって、心配なんだよ」
恥ずかしいセリフを平気で口にした後、麺をおいしそうにすすった。
お兄ちゃんは、度を越えたシスコンだなって、改めて思った。