先生、甘い診察してください



「先生!」

「あやちゃん」


待ち合わせ場所に行くと、先生はもう来てた。




「もしかして、待ちました?」

「ううん、今来たところだよ」


こういう会話、カップルみたい。




「それにしても……ここが待ち合わせ場所って」


どういうわけか、先生が待ち合わせの場所に指定したのは、医院の前。



「だってここがわかりやすいもん」

「た、確かにそうですね……」


まぁ、ロマンチックではないけど。


歩き出そうとした時、先生が私の前にスッと手を差し出した。



「ほら」

「……?」


この差し出された手は何?


意味がわからず、首を傾げた。



「手、繋いだ方がいいかなって。迷子になったら困るから」



ニコッと微笑みながら、「ん」と差し出された手を、ゆっくりと握った。



「行こうか」


先生の手、私の手よりも少し大きい。


でも、指先は細くて、綺麗。



迷子になったら困るからって理由で繋がれた手。


やっぱ子供扱いされてる。



でも、好きな人と手を繋げた事が嬉しかった。



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