先生、甘い診察してください




「あ、あやちゃん」


タルトを食べてると、アイスコーヒーを飲んでた先生が、急に私の名前を呼んだ。


ジッと、私を上目遣いで見つめた後、



「少し、ジッとしてて」


身を乗り出して、左手を私の頬に添えた。



「えっ……」



先生、急にどうしちゃったの?ち、近いよ!!




「口元にクリーム付いてる」



先生は右手の人差し指で、口元に付いてたっていうクリームを拭って、そのまま指を舐めた。


付いてるよって、教えてくれてもよかったのに。




「あ、そういえばあやちゃんってさ、携帯あれなの?」

「あれ……?」


急に話題が変わった。



「ほら、あれ。あの、薄い……」

「スマホ」

「そう、それ!あやちゃんは、スマホなの?」

「はい、そうですよ。ほら」



カバンから携帯を取り出して、見せた。



中学の時はガラケーだったけど、高校に入って、お兄ちゃんがスマホに機種変してくれた。




「すごく面白いアプリがあるんですよ。ゲームなんですけど、やってみます?」

「うん!やる!」


どうやら先生は、スマホを触るのは初めてらしく、何故か緊張気味だった。



「画面をタッチする時は、そっと触れる感じでいいんですよ?力入れなくて大丈夫です」

「今時の携帯はすごいねぇ~。おっさんはついて行けないよ」


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