先生、甘い診察してください
忘れてました、とは言いにくくて、困った挙句、
「宿題を、教えてください……」
苦し紛れに出てきた言葉が、これだった。
「しょうがないな~。あやのために、手伝ってやるよ」
どうやら日向くんは納得してくれたみたい。
「宿題出せ。早速やるよ」
今日からいきなり?
「でも日向くん、予定とか…あるんじゃ」
「ないよ。だから今日は1日中、あやに付き合える」
申し訳ないな、と思いつつ、ご厚意に甘える事に。
「日向くん、ここは」
「あぁ、ここはな」
日向くんの教え方、上手い。
「……なぁ」
宿題をしてると、日向くんが急に私をジッと見つめてきた。
「髪の毛、鬱陶しくない?結んだ方がいいよ。あ、机の上にゴムがあるじゃん」
机の上のゴムを手に取って、私の後ろに回った日向くんは、私の髪の毛を束ね始めた。
もしこれが大橋先生だったら、ドキドキしてたのかな?
「よし、結べた。あやって、ポニーテール似合うよな」
「この髪型って、馬の尻尾みたいだよね。こないだそう言われたの」
「マジ!面白い事言うな。誰が言ったの?」
何故か、大橋先生の名前を言おうという気になれなくて、
「ちょっと、友達に……」
適当に誤魔化した。