先生、甘い診察してください


すれ違う時、ふいに陽菜ちゃんと目と目があって、陽菜ちゃんはペコッと頭を下げた。


私もつられて、頭を下げた。



近くで見ても、やっぱ可愛い……。




「あ、そうだ」



医院を出ようとした時、陽菜ちゃんは思い出したように呟き、先生の方を見て、



「智也先生!夏祭りの件、考えておいてね!」

「あ、うん……」



どこか意味深にも聞こえる言葉を残して、陽菜ちゃんは上機嫌で医院を後にした。




「いらっしゃい、あやちゃん」

「はい、どうも……」



陽菜ちゃんとは仲良いの?って、聞こうと思ったけど、止めた。



こういう事はいちいち気にしてたらダメ。



患者さんと仲良くする事も、仕事の一貫なんだよね?


気がつくと、先生の顔が目の前に。




「暑いから、熱中症?」

「いえ、大丈夫です。少し、ボーっとしちゃって……」



夏祭り、陽菜ちゃんと一緒に行くの?



「中に入ろうか」

「はい」



モヤモヤした気持ちのまま、先生に背中を押され、診察室の中へ。


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