先生、甘い診察してください


「はい、終わり。お疲れ様」



治療が終わり、診察台が起こされた。



「まだ少し膿が出てるけど、もう少ししたら治るからね」



フワッとした優しい笑顔。



この笑顔を、私だけに見せてくれたらいいのに。


独占できたらいいのに。





「夏休みの宿題は、順調に進んでる?」

「まぁ、何とか。幼馴染に手伝ってもらえる事になったんで」



私が何気なく、そう言った途端、



「…そっか」



大橋先生の笑顔が、引きつった気がした。



でも、それはほんの一瞬の出来事だったので、気のせいかなって思った。





「もうすぐお祭りがあるね」

「え、あー、そうですね……」



唐突に話題の中心は、もうすぐ行われる夏祭りに変わった。



「あやちゃんさ、誰かと一緒に行くの?そもそも、行く予定?」



何でそんな事、聞いてくるんだろう?




「えっと……私は……」


日向くんと、行く約束になってる。



< 119 / 497 >

この作品をシェア

pagetop