先生、甘い診察してください
「はい、終わり。お疲れ様」
治療が終わり、診察台が起こされた。
「まだ少し膿が出てるけど、もう少ししたら治るからね」
フワッとした優しい笑顔。
この笑顔を、私だけに見せてくれたらいいのに。
独占できたらいいのに。
「夏休みの宿題は、順調に進んでる?」
「まぁ、何とか。幼馴染に手伝ってもらえる事になったんで」
私が何気なく、そう言った途端、
「…そっか」
大橋先生の笑顔が、引きつった気がした。
でも、それはほんの一瞬の出来事だったので、気のせいかなって思った。
「もうすぐお祭りがあるね」
「え、あー、そうですね……」
唐突に話題の中心は、もうすぐ行われる夏祭りに変わった。
「あやちゃんさ、誰かと一緒に行くの?そもそも、行く予定?」
何でそんな事、聞いてくるんだろう?
「えっと……私は……」
日向くんと、行く約束になってる。