先生、甘い診察してください
夏祭り当日。
「いい?知らない人には絶対ついて行ったらダメだよ?日向くんのそばを離れたらダメだよ?」
お兄ちゃんは、わざわざ仕事から早く帰ってきて、浴衣を着せてくれて、今は私にグダグダ注意事項を述べてる。
浴衣じゃなくて、私服でもよかったんだけど。
私の浴衣は、白地にピンクの水玉。
―ピンポーン
約束の7時丁度に、チャイムが鳴った。
「あ、日向くんが来たみたい」
急いで玄関へ。
「おっ、浴衣じゃん」
玄関を開けて、日向くんは私を見るなりそう発した。
「わざわざ迎えに来てくれて、ありがとね」
「いいってことよ。それより……似合ってるじゃん」
「ありがとう」
素直に嬉しかった。
かなり照れくさかったけど。
「行こうか」
「うん」
「おーい、あや!あんまり遅くなるんじゃないよ?日向くん、あやの事頼んだよ」
リビングから出てきて、玄関に来たお兄ちゃんが、大きく叫んだ。
「わかってますよ、お兄さん。ほら、行くよ」
「えっ…ちょ、ちょっと……」
日向くんは、ためらいもなく、私の手を握って、歩き出した。