先生、甘い診察してください
日向くんと手を繋ぐのは、小学校低学年以来。
不思議とそんなにドキドキはしなかった。
繋いだ手が離される事ないまま、屋台がズラリと並ぶ場所に到着。
「あや、まずは何がいい?」
「金魚すくいやりたい!」
小学生の時は、金魚が1匹もすくえなくて悔しい思いばっかしてたけど、今回こそはリベンジするもんね。
「金魚すくいの屋台は向こうにあるよ。行こう」
グイっと、手を引いて歩く日向くん。
「こうやって2人で祭りに来たの、久々だな。あやの浴衣姿、見たの初めてだし」
賑やかな中で、日向くんのしみじみした声がハッキリと聞こえてきた。
「あー、逃げられたぁ……」
今回こそはとリベンジに燃えてたものの、金魚がすばしっこくて悪戦苦闘。
苦戦した末、最終的には、
「……破れた」
結局、1匹もすくえずにゲームオーバー。
「本当に下手だよな」
私の横で軽く毒を吐く日向くんの小さなボールには、数匹の金魚が泳いでいた。
そう、日向くんは金魚すくいがすっごく上手。
「ねぇ、今度は出目金すくって」
「ん、OK」
私の要望通り、少し大きめの出目金をすくってくれた。
結局、私はリベンジならず。