先生、甘い診察してください

砕け散る




「…あや?」



部屋で、ベットに潜って泣きはらしてると、いつの間にか帰宅してきたお兄ちゃんが遠慮がちに部屋に入ってきた。



「保険証、忘れて帰ったんだって?ここに置いとくよ」

「……」


返事はしなかった。


絶対、鼻声だもん。顔も涙で悲惨な事になってる。




「ねぇ…、何かあったの?」

「……」

「……言いたくないなら、いいけど。今日さ、智也の様子も変だったんだよなぁ」


それだけ言い残して、お兄ちゃんは部屋を出て行った。




言えないよ、失恋しただなんて。


そもそも誰にも言ってないんだもん。



大橋先生に恋した事は誰にも言ってない。内緒の恋だった。



失恋したなんて、誰にも言えない。


誰かに言えたら、少しは楽になるだろうに……。





苦しい。



胸が締め付けられるみたいに、痛くて、苦しい。


大きな穴が心にポッカリ空いたみたい。




「先生っ……」



私は気にしないよ?


年齢差なんて、これっぽっちも気にしてないのに。




もう、わからない。


先生にどんな顔して会えばいいのか…わからないよ…。


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