先生、甘い診察してください
とりあえず、文化祭とか以前に……、
(この痛み…何とか、したい……)
歯の痛みを、ずっと我慢するのは……さすがに無理。
「……来ちゃった」
放課後、無意識のうちに私の足はここに進んでいた。
通うの止めちゃって、今更来ても…怒られるだけかな?
大橋先生に会ったら、まず何て言えばいい?
「……やっぱ帰ろう」
中に入る勇気がなくて、クルリと後ろを向いて、帰ろうとした。
「あやちゃん?」
急に掴まれた右腕。
「さ、櫻田先生……」
「あやちゃーん。久しぶりじゃん!元気してた~?」
いつもと変わらずテンションの高い櫻田先生は、私をギュッと抱きしめた。
「嫌っ……!!」
「おっと……」
両手で胸板を押して、櫻田先生を突き飛ばした。
「そんな拒否しないでよ~。悲しいじゃん」
「だって……白衣から…匂いが、しました。歯医者さんの、独特の匂いが……」
「えー!!マジ?自分じゃ全然わかんないのに」
やっぱ軽いな、櫻田先生って。