先生、甘い診察してください


「おーい。翔太くーん」


気の抜けたような声が聞こえてきた。



声のした方を見ると、そこにはお兄ちゃんと同じ白衣を着て、マスクをつけた男の人が立っていた。


この人も歯医者さん、だよね?マスクのせいで顔がほとんど見えない。でもクリクリっとした可愛らしい垂れ目。


目元だけを見た感じだと、優しそうかも。




治療してくれるの、この先生だったらいいな、なんて思った。



「智也、マスク外そうか。あやが怯えちゃってるから」

「あ、そうだね~。癖で外すの忘れてたぁ。ごめん」



緩い、フワフワしたしゃべり方。



智也、と呼ばれたその人はゆっくりとマスクを外した。



「あっ…」


つい、声が漏れた。


すっごく、カッコイイ。いや、カッコイイっていうよりは、可愛いって表現の方がピッタリかもしれない。


可愛らしい顔立ち。尚且つ、優しそう。


それ以前に、若い。




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