先生、甘い診察してください
「でもお話より、治療が先だね。今から医院に行こう」
大橋先生はそう言って、私の腕を掴んだ。
「診療時間は終ってるけど、あやちゃんのために特別診療ね」
特別診療って。いやいや、そんなの……。
「い、いいです!治してくれなくてもっ……」
先生と2人きりとか、本当に気まずいし。
こんな大きい虫歯を見られるのも…恥ずかしい…。
手を振り解こうとしてると、
「ダメ!!そんなの絶対許さないから!!」
「っ……!」
穏やかな大橋先生の口から発せられた、やや怒り気味の口調にビクッと体が反応した。
……怒らせちゃった?
「僕は担当医だよ?最後までちゃんと治す義務がある。それに……他の歯医者に行って、違う先生にあやちゃんの口の中見られるの…嫌だし」
それって……。
「どういう意味ですか?」
「だからっ…えっと……」
大橋先生の顔はいつしか真っ赤に。照れてる?
「つまり、あやちゃんの口の中を見ていいのは僕だけだもんっ…!」
な、何?その、若干独占欲っぽい発言は。