先生、甘い診察してください
「ねぇあやちゃーん」
「……」
「お顔こっちに向けてほしいなぁ」
先生は怒る事なく気長に接してくる。
「不安な事とかあるなら、言ってくれていいよ?」
先生は、変わらず優しい。
何事もなかったみたいに……。
「気まずく、ないんですか……?」
ずっとだんまりだったけど、私は先生から顔を背けたままそう言った。
「……気まずい?」
先生はキョトンといた表情をしたんだろうなって、見てなくても容易に想像できた。
「…忘れちゃったんですか?あれっ……」
“あれ”とは、告白の事。
今となっては色褪せた思い出でしかない。
「ハッキリ覚えてるよ。あやちゃんが好きって言ってくれた時の事……」
嘘……。
覚えてるなら、何でそんなに平然としてるの?
私はいろいろ悩んでるのに……。
「とにかく今は、こっち向いて」
「……」
「はぁっ…。仕方ないなぁ……。ちょっとお仕置きしなくちゃダメかなぁ」
お仕置き……。
先生の口から飛び出したのは、可愛らしい顔には似合わない言葉。