先生、甘い診察してください
先生はテキパキと診察を始め、気づいた時には口の中を覗き込まれてた。
「新しく虫歯ができてるてるね。大きさを確認したいから、レントゲン撮らせてね」
さっきのあれは、気まぐれだったのかな?
「ん~……」
レントゲン写真を眺めて、先生はさっきから唸ってる。
「新しい虫歯が3本できてるけど、2本は小さいね。でも1本はちょっと大きいかなぁ……」
これからどんな治療をされるのか、考えるだけで恐ろしいけど。
さっきのキスもどきの余韻が抜けてくれない。
ふいに目が合って。
ニコッと笑ったかと思ったら、今度は真剣な表情をして、
「あやちゃん、歯は抜いたらもう生えてこないし、大事な体の一部なんだから、どんな私情があっても、治るまで通うって事だけは約束しようね」
そんな事言われたって……。
「大橋先生のやる事は…いつも、よくわからないですね」
好きだけど、わからない。
迷路みたいに。
「その事に関しては後でちゃんと話してあげるよ……」
マスクに隠れたその表情は、少し切なげに見えた。