先生、甘い診察してください
本当の気持ち
始まった治療。
まずは、右側の奥歯の根っこの洗浄。
仮封が外されて、ファイルという器具が歯の奥に挿入された。
「痛くない?」
静かな診察室に、先生のマスクで少しこもった声だけが響いた。
匂いのキツイ薬が詰められ、根っこの洗浄は終わった。
「次は、少し大きめの虫歯の治療ね。痛かったら、左手上げて教えてね」
痛かったら嫌だな……。
泣き叫ぶ程痛かった治療は、1番最初に受けた根幹治療くらいだけど。
「手上げたら、すぐ止めてあげるからね。あーんして」
先生の手には、いつの間にか歯を削る器具が握られていた。
こ、怖い。
「…あの……」
「ん~?」
「……やっぱ、何でもないです」
観念して、目を閉じて、大きく口を開いた。
耳障りな機械音がして、歯に振動が伝わってきた。
あぁ、この感じ……。
ずっと根の治療だったから、歯を削られるの…少し久しぶり。
痛くない、けど……この振動…ヤダ、怖い…。