先生、甘い診察してください
「ん…ん~……」
怖さのあまり、情けない声が漏れた。
「痛かった?」
治療の手が止まり、すぐ目の前には先生の顔のアップ。
「い、いえ……」
痛くなかったのに声だすって……情けない。
「僕の白衣の裾、ギュッと掴んでていいよ。まだ痛みはないかな?」
「は、はい……」
失礼します、と呟いて、先生の白衣の裾を掴んだ。
再開された治療。
けたたましい音を立てて、どんどん削られていく歯。
「ほら、ゆっくり呼吸して~?」
先生の声かけのおかげでリラックスできて、徐々に力を抜く事ができた。
だけどそれも束の間。
「ん……」
振動の中に痛みが混じり始めた。
白衣の裾を掴む手に自然と力が入った。
もう少し我慢できるかなって思ったけど、
「んっ、いひゃいっ…」
耐えられなくて、大きな声が。
先生は手を止めてくれて、診察台が起こされた。
「今、神経に近い所を削ってるから、どうしても痛みは出るんだ。後ちょっとだから…がんばれる?」
子犬みたいな表情で、しかも首まで傾げられたら、
「がんばって、みます……」
嫌って言えない。