先生、甘い診察してください



痛かったけど、本当にすぐ終わった。



削った箇所にレジンというものが詰められ、何とか治療が終わった。





「お疲れ様。まだ2本虫歯があるけど、それはまた後日治そうね。今日はこれでおしまい」



診察台が起こされたけど、私はグッタリしたまま。



痛みから解放されたのは、久しぶりだった。





「ありがとうございました……」



痛みが取れて、少し気持ちが晴々した。






「さて、それじゃあ……本題に入ろうか」



先生の口から飛び出した、意味深な言葉。



本題って、あの…キスもどきの事?





「先生、何で…キス、なんてしたんですか?一応、マスク越しだったけど…」

「…どうしてだと思う?」



まさかの質問返し。



しかも先生は、ゴム手袋は外したけど、マスクはしたまま。


表情がわからない。




「からかっただけ、ですか……?」

「はずれ」




先生は椅子から立ち上がって、診察台に座る私の前に立ったと思ったら、





「えっ……」



何故か私は、先生に抱きしめられた。



< 174 / 497 >

この作品をシェア

pagetop