先生、甘い診察してください
「あー、はいはい、わかったよ。クソ!!智也に取られたかぁ~」
自分で自分の髪の毛を手でグシャッとした後、櫻田先生はその場にしゃがみ込んだ。
「あーあ。俺がカマかけたの……効いたみたいだな」
「カマかけたって…お前」
……話が全然わからない。
「でも、つまんなーい。あっさりくっついちゃうなんて」
なっ!!つまんないって……。
「酷いです~。恋人になれるまでに、私、いっぱい傷ついたのに…」
そんな言い方しなくても。本当に軽いんだから!!
「ごめんごめん。悪かったって。よかったね、あやちゃん」
ポンポンと、頭を撫でられた。
「でも……」
私の頭の上にあった手は、いつの間にか頬に移動してて、
「智也に取られて、悔しいな…」
頬に添えられてた手が、今度は首に移動し、スーッと首筋を指でなぞられた。
私を捉えるその目は、まるで獲物を狙う狼みたいだった。
本気なのか、冗談なのか、区別がつかなかった。
「絶対にそんなチャンスあげないもん。誰にも渡さないよ。僕だけが独占するんだから」
肩に腕が回され、抱き寄せられた。
「さっさと出て行って。純、この後、予約入ってるでしょ」
シッシッ、とあっち行けと言わんばかりに先生は手で払う仕草をした。
「もう!!チャンスがあったら絶対奪うからね!!」
意味深なセリフを残し、櫻田先生は仕事に戻っていった。