先生、甘い診察してください
「私…キスしたの、大橋先生が初めてですよ」
そう、大橋先生は私の初彼であり、ファーストキスの相手でもあるってわけ。
「それを言うなら僕も、キスはあやちゃんが初めてだよ」
過去に付き合ってた彼女とは、キス…した事なかったんだ。
よかった。
自然にホッと胸を撫で下ろしてた。
「あっ!そうだ、あやちゃん」
先生が急に何か思い出した。
何やら嫌な予感が。
「治療しようか。治さないといけない歯が、後2本あるから」
やっぱり。
そう言うと思いましたよ。
「嫌です……」
少し我儘を言ってみた。
「嫌なの?」
「だって…こないだ受けた治療、痛かったですもん」
こんな事言ったら、先生が困っちゃう。
「こないだは、大きい虫歯だったから痛かったんだよ?もう絶対痛くないから……」
眉を八の字に下げた、この困った顔も、私は秘かに好き。