先生、甘い診察してください


スラスラと必要事項を記入。



ある欄を書こうとして、ピタッとボールペンを動かす手が止まった。


「いつから痛かったのか」を記入する欄。



痛かったのは、2月頃。



でも書けない。


長い事放置してたって事を知れば、怒るに決まってる。





「いつから痛かったのか」という欄は空欄のまま、問診表を先生に渡した。




「いままで虫歯になった事ないんだよね?」

「は、はい……」

「すごいね~」



問診表を見ながら、先生は、いろいろ話しかけてきてくれた。




「ところで……」

体がビクッと跳ねた。



「いつ頃から痛むのか…忘れちゃった?」


黙り込む私を、先生は上目遣いで不思議そうに見つめる。



「……ごめんなさい」


これしか言えなかった。



「もしかして、怖い?」


予想外の言葉をかけられて、少し驚いた。



「怖い、です。どんな治療されるか」

「違う違う。そうじゃなくてね」


「多分だけど」と、先生は言葉を続けた。



「治療もだけど、怒られるって思ってたんじゃないの?だから余計に恐怖心を感じてるんでしょ?」


見事に図星。



< 19 / 497 >

この作品をシェア

pagetop