先生、甘い診察してください
スラスラと必要事項を記入。
ある欄を書こうとして、ピタッとボールペンを動かす手が止まった。
「いつから痛かったのか」を記入する欄。
痛かったのは、2月頃。
でも書けない。
長い事放置してたって事を知れば、怒るに決まってる。
「いつから痛かったのか」という欄は空欄のまま、問診表を先生に渡した。
「いままで虫歯になった事ないんだよね?」
「は、はい……」
「すごいね~」
問診表を見ながら、先生は、いろいろ話しかけてきてくれた。
「ところで……」
体がビクッと跳ねた。
「いつ頃から痛むのか…忘れちゃった?」
黙り込む私を、先生は上目遣いで不思議そうに見つめる。
「……ごめんなさい」
これしか言えなかった。
「もしかして、怖い?」
予想外の言葉をかけられて、少し驚いた。
「怖い、です。どんな治療されるか」
「違う違う。そうじゃなくてね」
「多分だけど」と、先生は言葉を続けた。
「治療もだけど、怒られるって思ってたんじゃないの?だから余計に恐怖心を感じてるんでしょ?」
見事に図星。