先生、甘い診察してください




「本当に、よかったんですか?私で……」



気がつけば、あらぬ事を漏らしてた。




「私は……13本も、虫歯があるんですよ?歯医者さんの彼女なのに……」


幻滅したり、しないのかな?




「それが、どうしたっていうの?」


先生の口調はこころなしか、怒ってるみたいに聞こえた。




「汚いって…思います、よね?女の子なのに…。先生は、虫歯になった事ないのに…私は…」




「はぁっ」と横からため息が聞こえてきた。


怒っちゃった……?






「あやちゃん…あんま勝手な事、言わないでくれるかな?」



言葉は、優しい。


でも口調は、怒ってるような、厳しい感じ。





「歯医者の彼女が虫歯になっちゃいけないって法律はないし、僕がいつ、あやちゃんを汚いって言った?」

「それは……」



言われてないけど、でも……。




「汚いって思うわけないじゃん。それに、根の治療中の歯以外は全部治ってるんだから、何も問題ないよ」



いつの間にか、私の左頬には先生の手。


目の前には、先生の顔のアップが。





「汚いって思ってたら、キスなんてしないよ。それにね、虫歯になるのは恥ずかしい事じゃないよ?僕がちゃんと綺麗に治してあげるんだから、大船に乗った気でいな」




その言葉は、とても温かくて、ホッとして、つい泣きそうになった。



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