先生、甘い診察してください

「…その通りです」


素直に返事をした。




「よくいるんだ。歯医者が怖くて、虫歯を放置しちゃって、病院に行こうにも、怒られるんじゃないかって思って、なかなか病院に行けないって人」


そうだったんだ……。



「でも、僕は怒ったりしない。絶対にね」

「どうして、ですか?」

「せっかくがんばって来てくれたんだよ?怒る必要なんてないでしょ。褒める事はあっても怒る事はない!」



先生のドヤ顔が、少しおかしくて、可愛らしくて、小さく笑った。


この先生になら言える気がする。




「2月から、です…。痛かったの…2月から、なんです…」



言った後で一気に恥ずかしくなった。



「2月かぁ…。今は、6月だから、4ヶ月間痛いのを我慢してたって事か」


ポンポンと頭を撫でられた。



「ずっと痛いのを我慢して辛かったね…。もう大丈夫だよ。あやちゃんを苦しめるものを、すぐに取り除いてあげるからね」



落ち着けるために、気休めに言ってる言葉。




なのに、ドキドキしてる。


たったこれだけの事なのにすっごいドキドキしてる。



この人に。大橋先生に。





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