先生、甘い診察してください
カチャっと金属の音がした。
ゴム手袋をした先生の手が、頬に添えられた。
「ゆっくりでいいから、大きくあーんして」
顔の距離…こんなに、近いものなの……?
先生の手を見ると、歯科検診で使う小さなミラーが握られてた。
大丈夫、と自分に言い聞かせて、意を決して口を開けた。
「右上からいくよ。えっと…」
先生の口からは、意味のわからないような単語が連呼されていた。
C1やら2やら。櫻田先生がそれを記録してるみたいだった。
「はい、がんばったね~。一旦起こすよ」
体が起こされて、まな板の上の鯉状態から解放された。
「純、何本あった?」
「えっとー……10本、だね」
先生達は何の話をしてるんだろう?10本ってなんの数?
「あの…私の口の中って…何本、虫歯があったんですか…?」
5本くらいあったのかな?
「全部で10本だね」
「えっ…!じゅ、10本…?」
一気に恥ずかしさで顔が熱くなった。