先生、甘い診察してください
「先生…その歯、抜いちゃうんですか?…治療、できないですよね…」
放置した代償なんだろうな……。
「ううん。抜かないよ?ハードになるけど、治療できるよ。心配しないで。ちゃんと治してあげるからね」
頭を撫でられて、心臓がドキドキ。
「でも、治療にはちょっと時間がかかっちゃうなぁ。最後まで、通院できる?」
「はい。大丈夫です」
恐怖心はまだある。でも、この先生ならきっと大丈夫。
「さて…どうする?治療、今日から始める?それとも後日にする?」
怖いけど、自分の口の中に10本もの虫歯がある事が恥ずかしい…。
「今日から始めてください…」
容赦ない痛みからも早く解放されたい。
「わかった。治療内容、簡単に説明しようか?」
「はい…」
「まずね、虫歯になってる部分を削って、歯髄っていう歯の神経を取って、根っこの膿を出すね」
複雑そう。
大橋先生は心配そうな表情をして「無理だけはしないでね」と言い、ゆっくりと私の座る診察台が倒されていった。