先生、甘い診察してください
「見て。これで、虫歯になってる部分を削るんだよ」
先生が手に持って説明してくれてる器具は歯を削る機械らしい。
「歯の治療は、初期段階の小さい虫歯なら削っても全然痛くないんだよ」
次に先生が口にした言葉を聞いて更に驚いた。
「試しに、小さい虫歯を1本治してみようか」
「えっ…!」
オロオロしてる私とは対照的に先生は、
「あーんして~」
もう体勢に入ってる。
「左上の4番を治そうね。C1だからすぐ治っちゃうよ」
「でも……」
「…僕の事、信用してくれないの?」
マスクをしててもわかるくらい、先生の顔はシュンッとなってる。
申し訳ない気持ちになって、
「…し、信用します…」
結局、促されるままに口を開いてしまった。
「絶対痛みはでないけど、もし痛かったら、左手上げてね」
口の中にミラーが入れられて、キィィィという嫌な機械音が。
怖い!
「大丈夫。ほら、ゆっくり深呼吸してごらん」
左上の歯に伝わってきた振動、水飛沫。生まれて初めて経験する感覚。
でも、本当に痛くなかった。