先生、甘い診察してください



削った後、匂いのキツイ薬が詰められた。


これで残りは……。



「後、9本も…あるんですね」

「前歯が虫歯になってなかっただけまだいいじゃ~ん」


フォローになってるような、なってないような…。




「さて…麻酔がしっかり効いただろうから、右下6番の治療を始めようか」



再び、倒される診察台。



「痛かったら左手上げてね。はい、大きくあーん」


言われた通り、素直に口を開いた。




最初は、痛くなかった。


なのに段々、振動の中に微かな痛みを感じ始めて…。



「んっ…」


痛い…。


左手を上げると、止めてくれて「麻酔追加しようね」と言われた。



2本目の麻酔が終わり、今度こそ大丈夫、と思ったのもつかの間。



「んっ…んん!」


すぐに感じた痛み。



「…ごめん。もう少し…がんばれるかな?」



痛がってる事に気づいた先生が、手を止めずに尋ねてきた。


もう少しってどれくらい?と思いつつも、微かにコクンと頷いた。




「んっ…ぃあっ…」


必堪えようとはしてるけど、漏れる声。


気がつけば目からボロボロと涙が零れ落ちていた。


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