先生、甘い診察してください
ここに通う必要がなかったら、もう智也さんには……。
「あやちゃん、意外と…おバカちゃんなんだね」
ションボリしてる私とは対照的に、彼は平然としてる。
おまけに軽い毒舌まで。
「歯が治っても、ここに来る理由は、なくならないでしょ?」
「え…?」
首を傾げた。
だって、虫歯がなかったら、わざわざ通う必要性はなくなるわけで……。
「僕に会いに来るっていう、立派な理由があるじゃん」
気がつけば、彼の腕の中。
彼の温もり、白衣からは歯医者さんの匂い。
すごく心地いい……。
「治療が終わっても、来ていいよ。……来てよ、あやちゃん。頻繁に会えなくなるの、嫌」
彼の顔を見上げながら、
「はい…」
返事をした。