先生、甘い診察してください
「…陽菜ちゃん……」
やっぱりその子は、陽菜ちゃんだった。
「…あやちゃん…」
陽菜ちゃんは、右の頬に濡れタオルを当てていた。
歯、痛むのかな……?
「っ……」
「あっ…待って!」
帰ろうとする陽菜ちゃんの腕を掴んで、引き止めた。
「余計なお世話かもしれないけど…歯、痛いんだよね?」
「……」
黙ったまま、陽菜ちゃんはコクンと頷いた。
「せっかくここまで来たんだから、一緒に中に……」
「…無理……」
「え……」
「無理だよ…。絶対……」
ボロボロと涙を流して、陽菜ちゃんは泣き出した。