先生、甘い診察してください
「根っこを綺麗に洗浄するね」
先生の手にはファイルが。
根の治療、こないだは痛かった。今日も、痛いの……?
「いっ…嫌っ…!」
「えっ…」
怖くなって、口を閉じて、両手で口を覆った。
「ご、ごめんなさい…あの…」
穴があったら入りたい…。
「謝らないでよ~。ごめんね、怖かったね。でも、大丈夫だよ?もう痛くないから」
「…本当?」
「うん。……やっぱ、歯医者さんの痛くないって言葉、信用できないよね」
そんな表情しないでください!
子犬みたいにシュンッとした先生の顔を見たら、胸がキュンッとなった。
「そんな事ないです!大橋先生の言葉は、信用できます…!」
つい必死になってた。
「ありがとう。あやちゃんにそう言ってもらえると、嬉しい」
やっぱ、好きだな…。先生の優しい笑顔。
落ち着きがある、大人の男性って感じ。
先生の言った通り、この日の治療は全く痛くなかった。
「はい。今日は終わり」
あっという間に感じて、ちょっと残念だった。