先生、甘い診察してください



「根っこを綺麗に洗浄するね」



先生の手にはファイルが。


根の治療、こないだは痛かった。今日も、痛いの……?




「いっ…嫌っ…!」

「えっ…」


怖くなって、口を閉じて、両手で口を覆った。




「ご、ごめんなさい…あの…」


穴があったら入りたい…。



「謝らないでよ~。ごめんね、怖かったね。でも、大丈夫だよ?もう痛くないから」

「…本当?」

「うん。……やっぱ、歯医者さんの痛くないって言葉、信用できないよね」



そんな表情しないでください!

子犬みたいにシュンッとした先生の顔を見たら、胸がキュンッとなった。



「そんな事ないです!大橋先生の言葉は、信用できます…!」


つい必死になってた。



「ありがとう。あやちゃんにそう言ってもらえると、嬉しい」



やっぱ、好きだな…。先生の優しい笑顔。


落ち着きがある、大人の男性って感じ。




先生の言った通り、この日の治療は全く痛くなかった。




「はい。今日は終わり」


あっという間に感じて、ちょっと残念だった。


< 37 / 497 >

この作品をシェア

pagetop