先生、甘い診察してください
「あや、治療の方は順調?」
夕飯を食べてると、お兄ちゃんはたいていこの話題を持ち出してくる。
「うん。順調。でも、まだまだ治療は続くんだって」
友達にできない恋の悩み。兄にはもっと言えるわけない…。
何故かうちの兄は昔から、やたらと「男の子とは遊んじゃダメ!」と私に厳しく言い聞かせてきた。
更に中学生になった時には「男女交際は禁止だからね!」とまで言われた。
うちの兄は極度のシスコン。昔から私が男の子と接触するのをやたらと嫌がった。
普通にしてれば、カッコイイのになぁ…。
「あ、そう言えば」
思い出したように口を開いた兄は箸を置いて、私をジッと見つめて…。
「なんか智也がさ、あやの事楽しい子だねーってよく言ってるな」
「えっ…!」
「楽しい子で、すごく物知りだって言ってたな」
う、嘘!嘘、嘘、嘘ー!!
「ちょっ…、あや!」
ごちそうさまも言わず、箸を置いてリビングを飛び出して、自分の部屋へ。
自室に入った途端、緩んでニヤけてしまう頬。
ほんの些細な、小さい事なのに嬉しい。
大橋先生が私の事をそんな風に思ってるなんて……。