先生、甘い診察してください
「帰ってくるの、早いね?お仕事…早く終わったの?」
動揺して、声が裏返った。咄嗟に薬を後ろに隠した。
「うん…。今日は、早く上がっていいよって言われたから…。だから早く帰ったんだけど…」
「そ、そっか…」
お兄ちゃんは訝しげな目で開きっぱなしの引き出しを見て、視線を再び私に移した。
うぅ…。このピンチ、どうやって切り抜ければいいの…?
「さっき何か隠したよね?」
「えっ…」
「後ろに隠したけど…何を隠したの?」
「……」
ただ、後ずさりする事しかできなかった…。
「何を隠したのか、見せて?」
「……」
「この引き出しって…薬が入れてあるトコだけど、やっぱ具合悪いんでしょ?」
「それは……」
「あや、ちゃんと答えなさい」
ジリジリと距離を詰めてくるお兄ちゃん。後ずさりしかできず、次の瞬間。
―ドンッ
「……!」
あっという間に背後の壁に背中がぶつかってしまい、逃げ場はなくなってしまった。