先生、甘い診察してください
「お疲れ様~」
この日もあっという間で、痛くなかった。
「ありがとうございました」
「はい。今日のご褒美ね」
渡されたのは、チョコレート。
「いいんですか?こんな甘いの」
「いいのいいの」
歯医者さんなのに、やる事が矛盾してる。
「先生って医者っぽくないですよね?」
「よく言われる…」
あれ?もしかして気にしてた?
「医者っぽくない所が先生の良いところですよ!なんか気軽に話せるっていうか…、緊張しないっていうか」
フォローになってるのかな?これ。
「笑顔を見てると、癒されるし、自然とリラックスできるんです。腕も良いから治療も安心して任せられるし…」
一見頼りなさそうだけど、腕は絶対確か。
「いつも、そうなの…?」
「へ?」
なんか先生の顔が、赤くなってる?
「誰に対してもそんな風に…ストレートなの?」
「い、いえ…。そういうわけでは…」
どっちかっていえば、消極的な方。
なのに、ストレートに言う時は言う。
言葉の方が相手によく伝わるって、お兄ちゃんがよく言ってたから。
「素直なのは、可愛いから…いいけどさ…」
「……!」
今、可愛いって言わなかった?
「そんなにストレートに言われると…、恥ずかしいよ」
俯き加減の彼の顔は、リンゴみたいに赤かった。